インライン全数検査用、研磨焼け・残留応力渦流検査 In-line monitoring using eddy current testing for grinding burn and residual stress

株式会社 ケン・オートメーション 矢尾板達也、鈴木仁志 / ibg Pruefcomputer GmbH Jochen Iwan , Wolfgang Korpus Ken Automation, Inc. Tatsuya Yaoita , Hitoshi Suzuki / ibg Pruefcomputer GmbH Jochen Iwan , Wolfgang Korpus

Key Words: Grinding burn, Residual Stress, Crack, Eddy current testing, Non-contact, Non-destructive testing,

The grinding burn and residual stress to be left to the work piece by high speed grinding process causes a big problem. When the work piece which is the important preservation part of the automobile has grinding burn and residual stress, it may lead to abnormal abrasion and fatigue destruction starting from here. It should remove such a work piece, and it is demanded that it prevents it from leading to a serious accident and recall. However, there is not all quantity inspection in the in-line by non-contact and non-destructive testing such as the nitrided etching processing, the Barkhausen noise method, the X-rays diffractometry, the old eddy current testing method. Here, it shows the grinding burn and residual stress measurement for the examination for in-line all quantity by non-contact and non-destructive by the new eddy current method.

まえがき

研削加工の高速化に伴い、加工ワークピースに残る、研磨焼け・残留応力が問題を起こすことがある。自動車の重要保安部品であるワークピースに研磨焼け・残留応力があると、ここを起点として摩耗や疲労破壊に至ることがあり、研磨焼け・残留応力のあるワークピースを排除して、重大事故の発生やリコールに至らないようにすることが求められている。特に内面研削ではワークピースと研削砥石の接触弧が長く、また奥まった箇所では冷却クーラントが届き難く研磨焼け・残留応力が発生し易すいので、全数検査に向けた対応が求められている。

しかしながら、従来の研磨焼け・残留応力の検査手法である窒化処理、バルクハウゼンノイズ法、X線回折法、従来の渦電流法では、非破壊・非接触でインライン全数検査ができていない。

ここでは、新しい渦電流法で、非破壊・非接触でインライン全数検査に向けた研磨焼け・残留応力測定について述べる。

研磨焼け・残留応力・クラックの発生

研磨焼け・残留応力は研削加工時に発生する摩擦熱によって発生するダメージで、酸化作用、残留応力の変化、熱軟化、再硬化、クラック等の要因がある。図1に示すように、熱処理による生成された圧縮応力のマルテンサイトから、研削砥石とワークピースの接触箇所が600℃までは引張応力のオーステナイト領域に変化し、更に温度が高くなって720℃を超えると、引張応力のオーステナイトとなり研磨焼けとなる。更に強い引張応力ではクラックが発生する。

Fig.1 Principal of grinding burn and residual stress
Fig.1 Principal of grinding burn and residual stress

従来の研磨焼け・残留応力検査手法

従来から用いられている代表的な研磨焼け・残留応力の検査としては、窒化処理、バルクハウゼンノイズ法、X線回折法、従来型の渦電流法では、非破壊・非接触でインライン全数検査ができていない。多くの場合、研磨焼けの検出は作業者の目視検査に依存することが多いが、色が変わった研磨焼けは検出できても、色や組織変化の小さな研磨焼けや残留応力を検出することはできない。

図2に示す窒化処理では検査時間が長く破壊検査となり検査したワークピースは使用できない。バルクハウゼンノイズ法はワークピース形状に合わせた接触式のプローブを使い、スポット的な検査に向いている。接触させるために時間が掛かり、広い測定面積を持つワークピースの全数検査には向かない。またフェライト系の材料に限定され、研磨焼け・残留応力の検査はできるがクラックの検査はできない。またフェライト系の材料に限定され、研磨焼け・残留応力の検査はできるがクラックの検査はできない。図3に示すX線回折法はスポット的な測定箇所に限定され、全てのワークピースの検査には向かない。遮蔽の問題やX線作業主任者等の有資格者を要するといいたコストが掛かる。また従来の渦電流法では、それぞれの材質や熱処理を施したワークピースの標準欠陥試験片が必要で、これらの標準試験片の材料バラツキと研磨焼け・残留応力との極僅かな差を見つけるためのシビアな感度調整が必要とされる。

Fig.2 Nitrided etching processing
Fig.2 Nitrided etching processing
Fig.3 X-rays diffractometry
Fig.3 X-rays diffractometry

新しい研磨焼け・残留応力検査手法

ディファレンシャル・タイプの2つのコイルを埋め込んだプローブ(図4)を使用し、従来からある渦電流探傷方であるクラック検査から研磨焼け・残留応力検査を可能にしている。

Fig.4 Differential probe for crack detection
Fig.4 Differential probe for crack detection

クラック検査の概要を図5に示す。ワークピースまたはプローブが移動しながらクラックを通過させる。この時のワークピースとプローブのリフトオフは約0.7㎜で、常に同じリフトオフを保つ必要が有る。図5に示すようにクラックが無い箇所では2つのコイルに電位差が発生しないが、一つのコイルの直下にクラックが来ると2つのコイルに電位差が発生する。2つのコイルの間にクラックが来ると電位差が無くなり、もう一方のコイルの直下にクラックが来ると、先程とは逆方向の電位差が発生する(図6)。

Fig.5 Principals of crack detecting by eddy current method
Fig.5 Principals of crack detecting by eddy current method
Fig.6 Typical crack signal by eddy current method
Fig.6 Typical crack signal by eddy current method

10本程の研磨焼け・残留応力・クラックの発生しない良品ワークピースを用いてワークピース間の材料バラツキを考慮した材料特性を設定し、その後、この設定条件を超えているワークピースの研磨焼け・残留応力・クラックの有無を自動判別する。

研磨焼け・残留応力検査事例

図7に示すような自然な研磨焼けをと比較するために、人工的な研磨焼け・残留応力が評価できるかどうか検討し、図8のようなレーザーによる焼き入れを行ったワークピースを製作した。

Fig.7 Natural grinding burn
Fig.7 Natural grinding burn
Fig.8 Artificial laser grinding burn
Fig.8 Artificial laser grinding burn

図9に示す300W出力のレーザーで焼き入れを行った状態の切断面(上部側が表面)では、未だ研磨焼けは発生していない。図10に示す400W出力のレーザーで焼き入れを行った状態の切断面では、245μm深さの焼き鈍し領域が生成され研磨焼けが発生している。図11に示す600W出力のレーザーで焼き入れを行った状態の切断面では、表層に230μm厚さの表面硬化層が生成されている。

Fig.9 300W laser, no grinding burn
Fig.9 300W laser, no grinding burn
Fig.10 400W laser, annealing zone (245μm)
Fig.10 400W laser, annealing zone (245μm)
Fig.11 600W laser, re-hardening zone (230μm)
Fig.11 600W laser, re-hardening zone (230μm)

それぞれのレーザー焼き入れによってどの程度の残留応力がワークピースに発生しているかX線回折法で評価した。図12に示すようにX線回折法でレーザー焼き入れの中心に対して矢印方向にそれぞれの測定点における残留応力値の比較を表1に示す。300W出力のレーザーではレーザー焼き入れを行った箇所を中心にして、約-580~約-420MPa(約160MPa)の残留応力がある。400W出力のレーザーでは中心から、約-560~約780MPa(約1440MPa)の残留応力がある。600W出力のレーザーではレー中心方向に対して残留応力の値が-方向から+方向に転じているが、中心部では表面硬化のために残留応力の値が低くなって反対側では残留応力の値が+方向から-方向に転じている。

Fig.12 Evaluation laser spot area by X-rays diffractometry
Fig.12 Evaluation laser spot area by X-rays diffractometry
Chart.1 Residual stress analysis by X-rays diffractometry
Chart.1 Residual stress analysis by X-rays diffractometry

図13のような円筒ワークピースに300Wと400W出力の2箇所のレーザー焼き入れ、および、0.5㎜径,0.5㎜深さのピンホール1か所、3mm長さ,0.075㎜幅,0.05㎜深さのクラックを模した加工を円周方向と長手方向に2箇所施したワークピースを回転させて、0.7㎜のリフトオフでプローブを固定させて、これらの研磨焼け・残留応力と併せてピンホールおよびクラックが検出できるか検査した。この結果、図14に示すように、全ての欠陥を検出することができた。

Fig.13 Work piece with grinding burn, residual stress and crack
Fig.13 Work piece with grinding burn, residual stress and crack
Fig.14 Test result of grinding burn, residual stress by eddy current testing
Fig.14 Test result of grinding burn, residual stress by eddy current testing

まとめ

CBN砥石の普及に伴い高速研削加工が主流になってきている。このため摩擦熱による発熱量が多くなり高圧クーラント供給による冷却や砥石の改善が試みられている。しかしながら、ワークピースの材料,熱処理,前加工精度のバラツキや研削砥石の切れ味は常に一定ではなく、研削加工後の研磨焼け・残留応力の問題は大きなテーマとなっている。研磨焼け・残留応力はワークピースの摩耗や疲労破壊を引き起こすことがあり、研磨焼け・残留応力の発生したワークピースを100%排除しなければならない。特に自動車の需要保安部品や大型構造物においては思わぬ重大事故が発生することがあり、これらの管理は長年の課題となっていた。

ここで紹介した渦電流による研磨焼け・残留応力検査手法は、研磨焼け・残留応力だけでなくワークピース表面に開口しているクラックやピンホールも検出でき、且つ、非接触・非破壊検査でもある。このことはワークピースまたはプローブを回転させることができれば、インライン全数検査が可能であることを意味している。

参考文献
  1. Jochen Iwan, Wolfgang Korpus : Investigation of grinding burn by means of eddy current testing, DGZfP Arbeitskreis Zwickau-Chemnitz, 17 April 2012
  2. Heinz Poehlmann : Grinding Burn and its detection methods, January 2012