高速、高精度なシリコンウェハーのバックグラインド表面測定
Fast and precise surface measurement of back-grinding silicon wafers

株式会社ケン・オートメーション 鳥山大、丸山拓之、矢尾板達也 / Optosurf GmbH R. Brodmann, B. Brodmann K. Konovalenko, C. Wiehr Amkor Technology, Inc Ching-hsien Huang, Ya-leng Chen

Abstract

The objective in modern semiconductor manufacturing is the development of electronic devices with increasing smaller and thinner packages for portable products. One if the most important step to reach this goal is thinning the processed pattered silicon wafer from the backside by means of a mechanical grinding process down to below 50 μm. To avoid stress and subsurface damage this requires highest demand on the surface roughness which could be, in the final grinding step, in the range of 1 nm Ra. The usual method to measure surface roughness is single point measurements by means of a confocal microscope (CFM), a white light interferometer (WLI) or an atomic force microscope (AFM). The drawbacks of these instruments are the sensitivity against mechanical environmental noise and the long measurement time. In this paper, a new type of scattered light measurement method will be presented, which is capable to measure the full wafer surface of a 300mm wafer in less than 30s. Besides the roughness, the sensor also measures simultaneously warpage, waviness and defects. Results will be presented regarding silicon wafer surfaces ground with different grit sizes and defects.

Key Words: Back grinding; Surface roughness, Nano topography, Warpage, scattered light metrology

1. はじめに

エレクトロニクスの超小型化・高密度化に伴い、デバイスの厚みや熱特性などの仕様を満たすために高度なプロセスが求められる傾向にある。これは、処理されたシリコンウェハーを700μm以上あった厚さから50μm以下まで薄くする必要があることを意味する。最も一般的で比較的低コストな薄化方法は、残留シリコンを機械的に除去するバックグラインドである。ウェハーは、IC(集積回路)面を下にして多孔質の真空チャックに固定される。砥石の回転軸は、ウェハーの回転軸に対して軸外に配置されている(距離はウェハーの半径)。チャックの形状はやや円錐形で、ウェハーをごくわずかな傾きで変形させ、研磨中に砥石がウェハーの半分にしか接触しないようにする。チャックの回転と同時に砥石が回転することで、ウェハー表面に典型的な渦巻き模様の傷が発生する。砥石のグリットサイズや回転数などの加工パラメータによって異なるが、この機械的衝撃は、粗さ、応力、誘発される表面下の損傷の原因となる。したがって、最新のウェハーグラインド装置は、まず粗い砥石でシリコンを素早く除去し、最後に小さなグリットサイズの砥石で精密に研削するステップを踏む。この最終プロセスは、表面下の損傷と応力を最小限に抑えるために、50μmまで薄くする場合に絶対に必要な工程である。

多くの場合、表面の粗さはRa<10nmまたは1nmの範囲である必要があり、これは機械研削機にとって課題となる。ウェハー表面の粗さが高すぎたり、均一でなかったりする場合、ワイヤーボンディング、フリップチップの組み立て、モールド、テストなどの後工程で、薄いチップを破損させてしまうことがある。表面粗さが低いことに加えて、ダイシング後のダイの破壊強度は、研削痕の向きにも依存する。
ダイの強度と粗さ・表面性状との相関については、文献(Ref.1と2)に記載されている。特に精密研削を行う場合、不均一に摩耗する多数の単一刃を持つ砥石とシリコン表面との相互作用は、かなり複雑なプロセスである。

そのため、現在一般的に使用されているAFMやWLI、CFMによる数回の小面積粗さ測定では、グラインド後のウェハー表面全体の品質を予測することは不可能である。通常、1回の測定で評価される面積は、AFMの場合は20μmx20μm、CFMまたはWLIの場合は160μmx160μmである。各測定時間は約20秒~30秒で、環境機械ノイズの影響を避けるために防振設備が必要となる。

ウェハー表面全体の情報を得るためには、より高速で堅牢な測定技術が求められる。散乱光測定は、これらの要件を満たすことができる唯一の方法である。

本論文では、散乱光センサー[4]を用いて300mmウェハー全面の粗さを30秒以内に測定する新しい測定機(WaferMaster 300)の結果について述べる。センサーの特別な設計により、WaferMasterはさらに反り、うねり、欠陥の測定が可能である。

2. 測定原理と表面性状

散乱光を用いて表面欠陥や粗さを測定することは、CMPで研磨されたベアウェハー、パターニングされたウェハー、ハードディスク、鏡面、高品質の自動車部品などで既によく知られている。ウェハーのバックグラインドを測定する新しいタイプの散乱光センサーを図1に示す。

光源(1)は、スポットサイズ0.9mmの670nmの赤色LEDスポットでウェハー表面をほぼ垂直に照射する(2)。これが標準モードである(3モードある内の)。高い方位分解能を得るためには、同じ波長のレーザー光源から得られる直径0.03mmの別のスポットを点灯させる。光学系(3)は、32°の角度範囲で散乱光を集め、リニア検出器(4)に導く。他の散乱光センサーとは異なり、このセンサーは鏡面光(表面の0°部分)と、表面の微細構造によって生じる散乱光を測定する。このセットアップの利点は、散乱光分布(5)の重心を、表面の局所的な幾何学的変形の信号として使用できることである。表面の局所的な傾斜角度を知り、(エンコーダー信号によって作られる)等距離の表面を連続的に測定することで、局所的な高さを計算し、すべての角度を統合することで、表面のプロファイル全体を計算することができる。

図1 散乱光測定装置「WaferMaster」(右)のセットアップ(左)
図1 散乱光測定装置「WaferMaster」(右)のセットアップ(左)

測定中はウェハーを載せたチャック(6)が連続的に回転し、センサーはウェハー端から中央に向かって直線的に移動する。続いて、センサーはウェハー表面全体を測定し、標準モード(0.9mmスポット)で300mmウェハーを対象に、30秒間に約60,000ポイントで粗さ測定を行う。最大粗さ値を得るためには、リニア検出器を常に研削痕に垂直な方向に向ける必要があるため、センサーの追加回転(7)が非常に重要である。粗さパラメータとして、散乱光分布の分散Aqを算出する(図2)。φiは単一散乱角、Mは重心、p(φ)は分布曲線となる。

図2 散乱光の幾何学モデル。上:粗さ、下:形状測定。
図2 散乱光の幾何学モデル。上:粗さ、下:形状測定。

Aqの利点は、表面摩擦をよく表すプロファイルスロープのパラメータRdqと密接な関係があることである。平均粗さRaを粗さ値として設定するSemi規格に準拠するため、共焦点顕微鏡による異なるウェハーの比較測定により、AqパラメータとRaの相関があることを確認した。また、研削面の振幅分布が確率的に変化することに起因した砥石のグリットサイズが異なる場合でも、AqとRaの間には良好な相関関係があることが確認できた。しかし、Raが平均垂直高さのみを測定するのに対し、Aqはプロファイルの垂直・水平構造の両方に反応するため、より汎用性の高いパラメータであることを考慮する必要がある。このAqの特性は、ダイ強度を評価する上で興味深いものであり、今後、より詳細に調査する必要がある。

図3 相関測定 Ra(nm)=f(Aq)
図3 相関測定 Ra(nm)=f(Aq)

図3は、測定された相関関係を示している。複数のウェハーを異なる領域で調査し、#2000から#8000までの異なるグリットサイズで研磨をした。また、本装置の精度を確認するために、Ra値<1nmのCMP研磨ウェハーを測定した。Ra値を計算するために、WaferMaster装置でフィットした相関式を使用する。
前述したように、散乱光センサーは、傾斜角解析によって反りやうねりを測定するための第2の評価チャンネルを備えている。図2に示すように、測定ビームは2倍の局所傾斜角θの下で偏向される。したがって、散乱光分布はリニア検出器上で角度値Mだけずれることになる。θは、散乱光分布曲線の統計的一次モーメントを利用して測定することができる。エンコーダーからのステップサイズΔxと光学系の焦点距離を知ることで、局所的な高さΔyを算出し、合計することで高さプロファイルを生成することが可能である。

3. 結果

図4は、300mmサイズのウェハー3枚の粗さ結果を示している。これらはすべて同じ砥石(グリットサイズ#4000)で研磨されているが、異なる研磨機が使用されていた。合計40.000回の測定が0.9mmのスポットで25秒間に行われた。平均粗さ値の違いに加えて、特に機械が独自の特徴的なパターンを残していることを実証している。この解釈は、送り速度、チャックの形状、回転数などの研削パラメータを詳細に分析することが興味深いかもしれない。

図4 同じ砥石(#4000)を使用し、異なる研削盤を使用した場合の300mmウェハーの粗さの測定

200mmのバックグラインドウェハーの粗さ、形状(反り)、うねりを同時に測定した例を図5に示す。砥石もグリットサイズ#4000だったが、平均Ra値はもう少し高かった。研削痕のパターンから、左から右に向きを変える反時計回りの回転であることがわかる。真空を使用していないため、反りがやや大きい。うねりは周波数50のハイパスフィルターをかけて算出された。このフィルターは円周上に作用するため、中央部は端部や中間部よりも強くフィルターがかかっている。今後、異なるフィルター方式が採用される予定だ。

図5 200mmウェハーのバックグラインド。左:粗さRa、中:反り、右:うねり

うねり構造は粗さパターンに沿っているが、左から右に弱い線状の縞模様が重なっているのも見える。この縞模様は、次の測定結果(図6)でより顕著に現れている。これは、別の200mmウェハーを#2000砥石で研磨した結果だ。興味深いのは、粗い砥石によって引き起こされる高い粗さではなく、ここの縞模様が研削痕の波状パターンよりも顕著なことである。AからBまでのピーク差の高さは1μm以上であり、これは研削痕のうねりのプロファイル高さの約10倍である。

図6 グリッドサイズ#2000番台の砥石で研削したウェハーの粗さRa(左)とうねり(右)のマップ

線状の縞模様は、前工程のワイヤーソーイングプロセスが原因である可能性があり、研削プロセス後も消えなかった。これは、研削中にウェハーがチャックに真空固定され、表面が一時的に平らになっていることで起こり得る。研削後、ウェハーを離すと、再びうねり構造が発生する。この現象は、Pei et al [3]によって調査され、説明されている。さらに、チャックの洗浄が不十分な場合、同じ特性でバンプやディンプルが発生することがある。ディンプルの一例を図7に示す。研磨された300mmウェハーのうねりマップは、2つの大きなディンプルといくつかの小さなディンプルで覆われている。0.03mmのセンサースポットを使用して、より大きなディンプルをより高精度な局所分解能で再測定し3Dマップに表現した。幅はmm領域で、深さは1μmを超えない。

図7 ディンプルのある研磨された300mmウェハー(右)。0.03mmの測定スポットを3D表示した高解像度測定(左)。

高解像度測定の他の例として、図8をご覧いただきたい。本測定は、40mm×20mmの面積カバーするX/Yスキャンモジュールで、0.03mmという小さなスポットサイズを用いて行った。測定は、うねり構造(周波数25のハイパスフィルター適用後)を表している。平均粗さは5nmRaである。この部分の中央付近には、別のディンプルが見える。選択されたプロファイル(a)は、ピークから谷までの高さが約30nmで、一般的なうねりを示している。再現性測定により、高さ1nmの構造を解像できることが確認された。

これはWaferMasterをCMPプロセス後の平坦化品質を測定するためのナノトポグラフィー構造の評価において、さらに興味深いものにする。また、3Dグラフィックに見られるように、小さなスポットは単一欠陥(右側の赤いピーク)を検出することができ、最低欠陥の限界がどの程度なのかを調査する必要がある。確かに、特に前工程の小さな欠陥検出用に設計された、はるかに強力な散乱光システムにとは張り合えないが、後工程でこの機能を使う分には十分である。

図8 高分解能(0.03mmスポット)で測定された微粉砕シリコンウェハー表面
左:20mm×40mmエリアのうねり測定プロファイル
右:同じ面積だが、ディンプルを挟んでプロファイルを選択

4. まとめ

新しい散乱光センサー技術がウェハーの表面、特にバックグラインド分野の測定するためのものとして提示された。センサーは散乱光分布の分散(Aq)による表面粗さ測定と、形状(反り)やうねりを評価する偏向測定法を組み合わせたものだ。Raの評価は、共焦点顕微鏡による相関測定に基づいている。粗さ測定の感度は、0.1nmの精度でRa=1nmまで下がっていることがわかっている。この技術の利点は、早さ(300mmウェハー全体のスキャンで25秒)と環境機械ノイズに対する耐久性である。粗さ、反り、うねりを全面に表現することで、研削加工の特性評価や改善だけでなく、エッジ部からセンター部までの品質チェックに新たな可能性をもたらす。

パッケージデザインやバックグラインド後の工程の精度次第で、端から中央、周方向への粗さの違いや、強い反り、うねり、欠陥が、最終的なチップの機能・性能に影響を与える。ダイの破損などは、粗さ、特に研削痕の向きに直接依存する。そのため、バックグラインド品質を高速かつ継続的に測定することで、バックエンドプロセスの歩留まりを向上させることができる。

参考文献

  1. Michael Raj Marks, Zainuriah Hassan, Kuan Yew Cheong, Ultrathin Wafer Pre-Assembly and Assembly Process Technologies; Critical Reviews in Solid State and Materials Sciences, 40:251–290, 2015, DOI: 10.1080/10408436.2014.992585
  2. Desmond Y.R. Chong, W.E. Lee, B.K. Lim, John H.L. Pang, T.H. Low, Mechanical characterization in failure, strength of silicon dice, 2004 Inter Society Conference on Thermal Phenomena, 2004 IEEE
  3. Z.J. Pei, Graham R. Fisher, J.Liu, Grinding of Silicon Wafers: A review from historical perspectives, international Journal of Machine Tools & Manufacture, 48 (2008) 1297-1307
  4. Seewig, J., Beichert, G., Brodmann, R., Bodschwinna, H., and Wendel, M. 2009. Extraction of shape and roughness using scattering light. In Proceedings of SPIE. Optical metrology, Systems for Industrial Inspection VI 7389.